「お初にお目にかかります。久野家から参りました、久野時雨で御座います」

私は深く頭を下げると目の前に鎮座する男へ一礼した。

恋愛感情など一切無い。

利害一致から生まれた、これは単なる政略結婚。

「うぜぇ。一つ言っとくけど、間違えても俺に愛されるだなんて下らねぇ考えは持つなよ?俺はお前を愛さない」

彼は私を睨みつけると対面早々に席を退室された。

そんな彼を私はただ静かに静観していました。

異能も持たず才能にも恵まれなかった人生。

だがそれでも諦めきれない。

私が、私自身が生きろと。

生きてていいとそう思えるほどの価値を必ずやここで。

貴方様に認めて頂けるように。

今宵、私は隠世へ嫁入りする。