夕暮れ時になり、和樹と美咲は雅彦の軽快な歌声が遠ざかっていく音を耳にしながら、舞台のアイデアを練るために瓢箪山のTSUTAYAに向かった。空は穏やかなオレンジ色の空に包まれ、心地よい風が頬を撫でる中、彼らの足取りも軽やかだった。

TSUTAYAに到着すると、静かな音楽が流れる店内が広がっていた。本やDVD、音楽CDなどが整然と並び、落ち着いた雰囲気が漂っていた。美咲は目を輝かせて店内を見回し、「ここでアイデアを詰めていくのも楽しそうだね」と微笑んだ。

和樹も頷きながら、棚から演劇関連の本やDVDを手に取りながら眺めた。美咲は鞄からノートにペンを取り出して「じゃあ、まずはどんな舞台にしたいか、考えてみようか」と提案した。

和樹も真剣な表情で考え込み、二人は交互に演出のアイデアを出し合いながら、話し合いを重ねていった。美咲が提案した幻想的な舞台装置や、和樹が考えたキャラクターの感情表現など、異なる視点からのアイデアが次々に飛び交った。

時折、本の棚を歩く人々の声や、店内で流れる音楽が耳に入ってきたが、二人は自分たちの世界に没頭していた。時間が経つのも忘れるほど、彼らの創造力が瓢箪山のTSUTAYAを満たしていった。






瓢箪山のTSUTAYAでのアイデアづくりが終わり、和樹と美咲は別れることになった。店内を出て、夜の街に足を踏み入れると、周囲は静寂と穏やかな夜風に包まれていた。美咲は微笑みながら声をかけた。

「楽しかったね。こうして一緒にアイデアを出し合う時間、すごく大切なんだよね。」

和樹は微笑みながら頷いたが、心の中にはちょっとした寂しさが漂っていた。彼女と過ごす時間は何よりも楽しいものだったけれど、同時にその時間が終わることを惜しんでいた。

「うん、本当に楽しかった。また一緒にアイデアを出し合いたいな。」

美咲も同じく微笑みながら頷いたが、その後ろ姿を見つめる和樹の目には、少し切なさが隠れていた。

和樹の足取りは少し重くなり、彼は美咲に対する特別な感情を、静かに胸に秘めながら歩いた。それから何日も、和樹は一人で彼女を思いながら、街の明かりに照らされて静かに歩む日々を過ごしていた。