学校に戻った三人は、美味しそうなドーナツを手にしながら再び舞台の準備に取りかかった。

「お兄さん、優しい人だったね。こんなに忙しい中、私たちに声をかけてくれたなんて。」美咲が感心しながら言った。

和樹も頷く。「そうだね。人の温かさって、こんな些細な会話からも伝わってくるんだな。」

雅彦は噛みしめるように一口ドーナツを食べながら、「そういや、俺のバンド、お兄さんにも聞いてもらえるかもな。」

美咲が興味津々で尋ねる。「バンドのこと、詳しく教えてくれる?」

雅彦が自信を持って答える。「もちろんだ。だけど、今はちょっと長い話になるから、また今度ゆっくり話そう。」

そこで和樹が思い出したように言った。「そういえば、お兄さんがドーナツのおまけをくれてたこと、気づいた?」

和樹の問いに美咲が少し驚いた表情で答えた。「あ、そういえば…和樹くんが言うまで気づかなかった。お兄さん、ドーナツのおまけをくれてたんだ。」


すると、雅彦が生意気な口調で続けた。「おまけのドーナツ、オレだってちゃんとチェックしてたぜ。俺たちの舞台の成功と、俺のバンドのメジャーデビューのお兄さんからの前祝いだな!なかなかやるじゃないか。」

美咲と和樹は少し驚いた表情で雅彦を見つめたが、雅彦は自信満々に笑みを浮かべて続けていた。「それにしても、このドーナツの味もなかなかやるじゃないか。甘さともちもち感が絶妙に組み合わさってて、まさに至福の一品だな。これもお兄さんからの応援の味なんだろうな。」






三人がほっと笑顔を見せる中、再び台本を広げ、舞台のセットを組み立て、照明や音響の調整を行った。台本の最終チェックや演出の微調整を行いながら、徐々に舞台の形が整っていくのが感じられた。

しばらくして、作業が一段落した頃、美咲が微笑みながら言った。「本当に楽しみだね。文化祭が始まって、みんなに素敵な舞台を見せられるって。」

雅彦がにやりと笑って、「そうだな、あと少し頑張れば、俺たちの努力が結実する瞬間がやってくるんだ。」

和樹も同じく笑顔で言った。「俺もなんとかいい作品になるように脚本作り頑張るよ!」三人は手を合わせて誓い合うように頷き、再び作業に取りかかった。それぞれの得意分野を活かしながら、感動的な舞台を作り上げるために全力を尽くしていたのだった。






しばらくの間、作業の音が部屋に響いていた。

雅彦は手元の作業を中断した。
「ちょっと、そろそろ軽音楽部の練習が始まる時間だな。悪いけど今日は抜けるわ。」

美咲は微笑みながら頷き、優しく声をかけた。

「そうなの?頑張ってきてね。」

和樹もやわらかな口調で続けた。「練習頑張ってこいよ。また明日な。」

雅彦は軽快な笑顔で頷き、手に持っていたドーナツを噛みしめた。

ドーナツを食べ終えると、雅彦が軽快なリズムで「ドーナツ、ドーナツ、おいしいドーナツ~♪」と即興で作った鼻歌を歌いながら部屋を後にした。その歌は、彼の明るさと楽観的な性格を象徴するかのようで、美咲と和樹は微笑みながらその背中を見送った。

遠くから、軽音楽部のメンバーが楽器の音を奏でる様子が聞こえてきた。その音色は、まるで彼を待ち望んでいるかのように響いていた。


そして、しばらくして雅彦のギターと歌声が混ざり合った。その瞬間、部屋には彼の情熱的な演奏が広がり、雅彦の荒削りな音楽の響きが、和樹と美咲の心に新たな活力を与えていったのだった。