翌日は雨だった。


輝先輩との約束は気になったけれど、第三倉庫の裏には雨除けがない。
さすがに彼は待っていないだろうと考えながら昇降口に向かい、そのまま帰るつもりだった。


「お、美波!」


だけど、私の行動を読むように、昇降口に輝先輩が立っていた。


「なんで……」

「雨が降ってるから帰りそうだなと思って」


彼は「予想通りだった?」と苦笑して、私を見下ろす。


「ちゃ、ちゃんと行くつもりだったし」

「マジかよ? でも、俺らってお互いの連絡先も知らないじゃん。不便だし、美波のライン教えてよ」

「えっ?」

「これ、俺のね」


戸惑っている間に、QRコードを表示させたスマホを向けられる。


「いや、連絡先なんて別に……」

「知ってた方が便利だって。それとも、教室まで誘いに行った方がよかった?」

「それは嫌!」


反射で語尾がきつくなってしまい、慌てて口を閉じた。


「即答かよ」


輝先輩が肩を竦めて眉を寄せる。
だけど、彼は笑っていて、失礼な私の態度にも怒るようなことはなかった。