真菜は、本当に飲み物かと思うような勢いでクレープを食べている。
一方、私は半分くらい食べたところでお腹が膨れてきた。


「美波、もしかしてもう食べられない?」

「そんなことないけど、思ったより生クリームが多くてきついかも」


ずっと水泳をやってきた私は、女子にしてはよく食べる方だと思う。
ただ、甘い物を滅多に食べてこなかったせいか、生クリームたっぷりのクレープを完食するのは少しばかり厳しかった。


「うーん、私もさすがにお腹いっぱいだしなぁ……」

「大丈夫だよ、ちゃんと食べるから」


満腹に近づいてきたけれど、食べ切れないほどじゃない。


「でも、生クリームが飲み物っていうのはやっぱりわからない」

「そう? 私、生クリームなら飲めそうなんだけどなー」


彼女は無類のスイーツ好きだ。
クレープを始め、パンケーキやパフェなんかを食べ歩くのが趣味だと、口癖のように言っている。
週に三回のバイト代のほとんどは、スイーツに消えていくみたい。


私には考えられないけれど、真菜の選んだお店だけあってクレープはおいしかった。
だから、お腹が膨れて来ても、食べ進めるペースはあまり変わっていない。


「あ、あとであそこのゲーセンでプリ撮ろうよ!」


クレープをかじりながら、彼女が指差した斜め前に視線を遣った時。

「美波?」

ゲームセンターの自動ドアから、輝先輩が出てきた。