原宿(はらじゅく)の裏通りにある小さなクレープ屋さんは、大繁盛していた。


「わぁー! トロピカルアイスクレープがデラックスだよ、美波!」


一時間も行列に並ぶことになるとは思っていなかったけれど、真菜があまりにも生き生きした顔で言うから笑ってしまう。


「意味わかんないけど、言いたいことはなんとなくわかるよ」

「美波もデラックスにすればよかったのにー」

「いや、その大きさは食べ切れないし」

「こんなの、余裕だって! クレープなんて飲み物みたいなものじゃん」

「え、どこが……?」


チョコバナナを選んだ私は、自分の手の中にある大きなクレープを見た。


このお店のクレープは、生クリームがたっぷり入っているのが売りらしい。
私のクレープはもちろん、彼女のクレープにはお茶碗に山盛り二杯分くらいの生クリームが入っている。


「生クリームって飲み物っぽくない?」

「ごめん、それは意味わかんない」


真菜が「えーっ!」と言いながらも朗らかに笑う。
いつも通りに明るい彼女の雰囲気が、私の心を和ませてくれた。