保存療法か手術療法か。
水泳のことしか頭になかった私は、すぐさま手術を選んだ。


通常、術後二ヶ月程度で普通に歩けるようになり、半年から八ヶ月ほどでスポーツでも元のパフォーマンスができると聞いた時は、目の前が真っ暗になった。


だけど、リハビリ次第では早期復帰も可能だと言われ、それを希望に手術を受けることにした。
ところが、術後間もなく、細菌感染症にかかってしまったのだ。


アキレス腱断裂自体は珍しいことじゃない。
スポーツ選手では、バレーやサッカー、テニスをしている人が経験しやすく、基本的にはみんな復帰できているのだとか。


ただ、細菌感染症という合併症を起こしたとなれば、話は大きく変わってくる。
手術が成功したはずの私の左足は、細菌によって神経に異常を来し、八ヶ月に及ぶリハビリを終えても元通りに動くことはなかった。


『一年以内に復帰できる』と言われていたのに……。
わずかな望みを頼りに、痛みに耐えながらリハビリに励んだのに……。


私の世界の中心だった水泳が、私の日常からなくなったのだ。


今は歩くくらいでは痛まないし、見た目は普通だけれど……。わずかに麻痺が残り、ほんの少しだけ左足を引きずっている。
走ることも足を使う運動も、普通にはできなくなった。