「今日の放課後に行くの? 一緒に行こうか?」

「ううん……。長居する気はないし、すぐに終わるから」

「じゃあ、クレープは明日にしよっか」

「え?」


明るく提案した真菜に、目を瞬かせてしまう。


「挨拶のあとにクレープなんて食べに行く気にはならないでしょ? でも、美波の性格だと我慢して付き合ってくれそうだし」

「そんなこと……」

「それにさ、私のことを気にさせるのも悪いし、クレープは明日でいいよ。その代わり、明日はカラオケも付き合って!」

「真菜……」


彼女の気遣いに、感謝しか芽生えない。
私は笑顔で頷いて、「ありがとう」と返した。


放課後が近づくにつれて憂鬱になっていく心の中は、ひどく淀んでいた。
できれば部員とは顔を合わせずに、コーチだけに挨拶をして帰りたい。


部員たちは、私が入院中に連絡をくれたりお見舞いに来てくれたりと、心配してくれていた。
その上でこんな風に思うのは、なんて不義理なんだろう。


だけど、今はまだ、みんなと顔を合わせる勇気がない。
たとえばもし、未恵に面と向かって『牧野先輩の分まで頑張ります』なんて言われたら、きっとその場で泣いてしまう。


ようやく部活を辞めたばかりの今、心は現実に追いついていないのだから……。