冬を超えて桜が咲き誇り、また夏がやってきた。
雪が降るほど寒かった日々がうそみたいに、毎日暑い日が続いている。


私は進級して受験生。
輝先輩は、無事に志望校だったF大に合格して、理学療法士を目指している。


高校生と大学生という別々の環境に身を置いて、早三ヶ月半。

「美波!」

時にはくだらない喧嘩をしながらも、付き合ってもうすぐ一年を迎えようとしていた。


彼の髪は、また明るくなった。
今度は金髪まではいかない色だけれど、それでもほとんど金髪に近かった。


「先輩、遅刻だよ」

「悪い!」


膨れる私に、輝先輩が顔の前で両手を合わせる。


「教授に質問しに行ったら、資料整理させられてさ。お詫びになんか奢るから」

「じゃあ、パッションフルーツフラペチーノ」

「新作のやつな。いいよ、ベンティにする?」

「そんなに飲めないから」


本当は怒ってなかったけれど、彼が優しく笑ってくれるのが嬉しくて、もう少しだけ拗ねたふりを続けようと思った。