「だから、俺はもう踏ん切りがついてるってわかったら、美波はまた心を閉じて俺から離れていくんじゃないかって考えた……。そしたら、もっと早くに話すつもりだったのに、そういう不安ばかり大きくなって言えなくなった……」


輝先輩の気持ちが伝わってくるみたいで、心が痛い。
それなのに、彼の想いが嬉しい。


「あっ……」


ふと声を漏らした輝先輩が空を仰いだ。
私がその視線を追うと、どんよりとした曇り空から雪が降ってくるのが見えた。


「雪だ。本当に降ったね」

「だな。とりあえず移動する? このままだと濡れるし」

「待って。傘、持ってきてるから。このまま話したい」


彼は立ち上がろうとしたけれど、私はあえて制した。


今ここですべてを話せば、もっと輝先輩に近づける気がしたから。
彼の心の中をできるだけたくさん知りたい。


全部を理解するのは無理でも、少しでも寄り添い合いたい。
傘を差した私に、輝先輩が小さく笑う。


地面に落ちては消えていく雪の結晶のように、ずっと胸の奥にこびりついていた不安が溶けていった。