(言わなきゃ……)


そう決意して口を開いた時。

「ごめん!」

「あのっ……!」

輝先輩と私の声が、綺麗に重なった。


思わず顔を見合わせ、一瞬遅れて小さく噴き出してしまった。


「これ、俺のために用意してくれたんだよな?」


程なくして彼がコートのポケットから取り出したのは、私が落としたお守り。
ちゃんと渡したかった人に届いたことが嬉しくて、鼻の奥がツンと痛んだ。


「うん……」

「ありがとう」


微笑んだ輝先輩の声は、いつも通り優しい。
それだけで、安堵感に包まれていく。


「ちゃんと話したいし、謝らせてほしい」

「うん……。私も、ちゃんと謝りたい」


首を縦に振った彼は、どこかホッとしたような表情になった。
私も顔の力が抜けたことに気づいて、自分で思っていた以上に緊張していたんだと思った。


「私から話していい?」

「……わかった」


輝先輩も先に話したかったみたいだけれど、私に譲ってくれた。
私は「ありがとう」と返し、ゆっくりと深呼吸をする。