「ごめん、大丈――」
私の顔を覗き込んだその男子は、目が合った瞬間に涼しげな二重瞼の目を丸くした。
「東緑が丘の人魚姫……?」
「っ……」
胸の奥がえぐられる。
(やめて……そんな風に呼ばないで……)
独り言のように呟いた彼から顔を逸らせるようにしたものの、肩でする息のせいで声が上手く出せない。
「こっち」
すると、男子が私の手を引き、一瞬戸惑ったせいで反応が遅れた私を校舎の裏へと引っ張っていった。
思考が追いつかなくて、言葉がなにも出てこない。
泣き顔を見られたくないのに、私の手を引く彼の骨ばった手を振り解けない。
だけど、上手く動かない足が縺れてしまい、それに気づいた男子が止まった。
「ごめん……! 足、けがしてるんだよな?」
「なん、で……っ」
名前も知らない彼の言葉に、目を見開く。
直後、気まずそうな顔をされて、すべてを悟った。
私のこともこうなった事情も、同じ学校の生徒なら知っている人の方が多い。
昨夏のインターハイで二位に入賞した時、全校集会で校長先生から表彰された。
そんな私が事故に遭った当時は、それこそクラスメイトだけじゃなく、学年を超えて校内で噂になっていたみたいだった。
手術と入院を終え、しばらく休んで久しぶりに登校したあの日は、生徒たちからの注目の視線を浴び、まるで針の筵のようだった。
目の前にいる男子だって、事情を知っていてもおかしくはない。
私の顔を覗き込んだその男子は、目が合った瞬間に涼しげな二重瞼の目を丸くした。
「東緑が丘の人魚姫……?」
「っ……」
胸の奥がえぐられる。
(やめて……そんな風に呼ばないで……)
独り言のように呟いた彼から顔を逸らせるようにしたものの、肩でする息のせいで声が上手く出せない。
「こっち」
すると、男子が私の手を引き、一瞬戸惑ったせいで反応が遅れた私を校舎の裏へと引っ張っていった。
思考が追いつかなくて、言葉がなにも出てこない。
泣き顔を見られたくないのに、私の手を引く彼の骨ばった手を振り解けない。
だけど、上手く動かない足が縺れてしまい、それに気づいた男子が止まった。
「ごめん……! 足、けがしてるんだよな?」
「なん、で……っ」
名前も知らない彼の言葉に、目を見開く。
直後、気まずそうな顔をされて、すべてを悟った。
私のこともこうなった事情も、同じ学校の生徒なら知っている人の方が多い。
昨夏のインターハイで二位に入賞した時、全校集会で校長先生から表彰された。
そんな私が事故に遭った当時は、それこそクラスメイトだけじゃなく、学年を超えて校内で噂になっていたみたいだった。
手術と入院を終え、しばらく休んで久しぶりに登校したあの日は、生徒たちからの注目の視線を浴び、まるで針の筵のようだった。
目の前にいる男子だって、事情を知っていてもおかしくはない。