お祭り会場から高台に向かって、だいたい十分。
坂を上り切って視界が開けると同時に、小さな公園が見えた。


滑り台とブランコしかないここは、幼い子どもたちの遊び場なのかもしれない。
そんなことを考えていると、繋いでいる右手をクイッと引っ張られた。


「美波、上見て」


彼に促されて空を仰ぐ。


「わぁっ!」


直後、私は目を大きく見開いた。


住宅街の灯りと夜空。
都会の片隅だというのに、藍色の空にはたくさんの星が輝いている。
レモン色みたいな三日月も、煌々とした光を放っていた。


「綺麗だね。星がキラキラしてる!」


都会の真ん中にいたって、月や星は見える。
だけど、数え切れないほどの星が瞬いている光景は久しぶりに目にした。


「うん、すごいな。さっきの花火には劣るかもだけど」

「そんなことないよ。花火と星とは違うもん」


星なんて別に興味はないし、天体観測だってしたことはない。
それでも嬉しくなったのは、夜空を一緒に見ているのが輝先輩だから。


「そうだな」


なんとなくブランコの方に歩いて、ふたり仲良く腰を下ろしてみる。
子ども用だからか小さかったけれど、一応ちゃんと座れた。