お祭りの会場は、私の家の最寄り駅から七駅。
電車を降りると手を取られ、人混みに身を任せるように歩いていく。


今日の輝先輩は、カジュアル系ブランドのTシャツにデニム。
シンプルな服装だけれど、白いスニーカーとも合っている。


人混みに紛れると、彼の髪色はひときわ目立った。


「美波、なに食べたい?」

「わたがしとたこ焼き! あと、ヨーヨーが欲しい」

「わたがしって、お腹膨れないだろ」

「いいの。こういう時しか食べる機会ないもん」

「はいはい。あとで買おうな」

「……今、子ども扱いしたでしょ」

「してないしてない」


悪戯に笑う輝先輩につられて、小さく噴き出してしまう。
こんな些細なやり取りが楽しくて、彼とふたりで笑顔が絶えない。


屋台から漂う、たこやきソースの香ばしさやベビーカステラの甘さ。
たくさんの食べ物が混ざり合ったそれは、なんだか幸せの匂いみたいだった。


行き交う人たちやカラフルなのぼり。
沈んでいく夕日に反して、屋台の灯りが目立つ河川敷。


お祭りは初めてじゃないのに、ひとつひとつが新鮮で、キラキラして見える。
輝先輩も楽しそうで、そんな彼を見て私ももっと楽しくなる。