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九月の第二日曜日は、朝から晴天だった。


前日までの三日間は雨が続き、天気が心配でたまらなかった。
朝方まで雨はやまなかったみたいだけれど、お祭りが無事に開催されることになって心底嬉しかった。


「美波! 悪い、待った?」

「ううん、私も今来たとこだよ」


こんなやり取りがなんだかカップルっぽいな、と感じてキュンとした。
本当は十五分前に着いていたけれど、それは言わなくていいや……と思うくらいには今日の私は浮かれている。


「浴衣、着てきたんだな」

「う、うん……」


頷きながら、輝先輩の反応が気になって視線を泳がせてしまう。


紺地にひまわりの花が施された浴衣は、九月に入ってすぐに買ったもの。
明るい黄色のひまわりが彼の金髪みたいで、一目見た瞬間に迷わず選んでいた。


「似合う」

「……本当に?」


サラッと褒めてくれた輝先輩を見上げれば、彼が大きく頷いてみせる。


「うん。美波って、ひまわりって感じがするし」

「え? ……どこが?」


夏らしいひまわりの花は、いつだって太陽に向かって咲いている。
うじうじ悩んで前に進めずにいる私とは正反対に思えて、輝先輩の言葉が不思議だった。


「どこって……まぁ、なんとなく?」


彼の答えははっきりしなかったけれど、それでもなんだか嬉しかった。
私が輝先輩の髪色からひまわりを連想したように、彼も同じように感じてくれたのかもしれないと思うと、以心伝心みたいに思えたのだ。