「そういえば、夏休み中に水族館は行けなかったな」

「……だね。お互いバイト入れすぎたよね」

「俺、夏休みでいったんバイトを辞める予定だったから、めちゃくちゃシフト入れたんだよな。美波もほぼ毎日バイトしてるし、水族館は二学期に行くか」

「あのね」

「うん?」

「水族館は受験が終わってからでいいから、お祭りに行かない?」

「祭り?」

「うん。九月の第二日曜日にあるんだけど」


都内のある場所で開催されるお祭りは、規模はそんなに大きくない。
だけど、屋台はたくさん並ぶし、小規模ながらも花火も上がる。


「いいよ。でも、水族館はいいの?」

「先輩、受験生だし。とりあえず水族館は先輩の受験が終わってからでいい。でも、お祭りは夏しか行けないし」

「確かにそうだな。じゃあ、祭りに行こうか」

「うん!」


真菜と木村先輩がお祭りで付き合うことになったと聞いて、少しだけ羨ましくなっていた。
だから、輝先輩と一緒にお祭りに行けることになって、とても嬉しかった。


学校が始まるのは憂鬱だけれど、一学期までよりも嫌じゃない。
そんな風に思うのは、彼と過ごした夏休みの間に少しずつ、本当に少しずつだけれど、心の傷が癒えていったからかもしれない。


あんなにも憂鬱だった夏が前ほど嫌じゃなくなっていることに気づいた今は、彼とのお祭りデートが待ち遠しかった。