できることなら今すぐにでもここから逃げ出したいけれど、先延ばしにしてもきっとなにも変わらない。
退部届を出すまでに三ヶ月もの時間を要したのに、結局は覚悟を決め切れなかった今のように……。


どうせ時間を置いても今と同じ思いをするのなら、一気に傷口をえぐられることになったとしても、いっそ一息にすべてを終わらせたいと思った。
そして、一刻も早く、自分の生活の中心だったものと離れてしまいたかった。


これから職員会議だったらしい古谷先生は、一時間後なら一緒に行けると申し出てくれたけれど、「ひとりで大丈夫です」と笑顔でうそをついた。


重い足取りで向かうプールまではあっという間で、早朝と放課後に毎日通っていたのがもう随分と前のことのように思えた。
屋内プールが設置されている校内は、それ以外にも運動部の設備が整っている。


東緑が丘高校は、スポーツ推薦で入学する生徒が一定数いる。
そのため、運動部の活動に力を入れている。


各部内の監督やコーチの大半は外部から来てもらっていたり、メディアで取り上げられる生徒がいたりする。
水泳部もそのひとつ。