「ここです、ここ。小六の僕です」

 ヒロインとヒーローが公園のベンチでいちゃいちゃしているシーンがテレビ画面に流れている。野田が自身の出てくるシーンまで早送りしていたから内容は全く分からない。

 野田が、恋人ふたりの前でお父さん役の人とキャッチボールをしていた。

「お父さん役の人、イケメンだな」
「あ、この方は、僕が中学一年生の時に母と離婚して別の女の人のところへ行った実の父です」

「そうなんだ……」

 急に野田の家族のことをそこまで知っていいのかな?って気持ちになった。

「父の浮気が原因で離婚したけれど、そんな気まずい的な表情をされなくても大丈夫です」

「あ、うん……」

「家族の形なんて色々で。見えない部分の方が大切な気がして、僕は元気な母と過ごせていることに幸せを感じております」

 なんか難しいこと言ってる。見えない部分、か。同じ歳なのに野田は俺よりも人生悟ってる。

 話しているうちに野田の出ていたシーンは終わった。

「もしよければお貸ししますか? 内容もなかなか面白いですし」

 野田の出てるシーンをもう一度、家に帰ったら確認したくなる気がした。

「じゃあ、貸してもらうかな?」

 俺の言葉よりも先に野田はDVDをDVDプレイヤーから取りだしていた。そしてそれを渡してきた。

「今流した29分の部分と、実は後ろ姿だけですが、1時間8分のところにもいますから」
「そうなんだ、分かった」

 野田、よくそんな細かい数字まで覚えてるな。

 他の出演しているDVDも貸してもらうことになった。DVDを沢山貸してくれようとしてたけど、一気にそんなに観れないから3枚だけ借りてあとは断った。