野田のマンションに着いた。
 エレベーターで三階に上がり、一番端が野田の住んでいる所だ。

「どうぞ」

 野田は玄関のドアを開け、明かりをつけると俺を先に中へ通した。

「誰もいないの?」
「はい。僕は母とふたり暮らしで、今母は出張中なので誰もいないです」
「そうなんだ」
「部屋は、こちらです」

 野田の部屋に案内された。
 イメージ通り、無駄なものがなくて綺麗に片付いている部屋。

「僕は他人を部屋に基本入れることはないので、今みたいな状況の時はどうしたらいいのか分かりません」

 若干視線を下げる野田。

「いや、別に特別なことしなくてもいいし。とりあえずちょっと話したら帰るわ」

 ふと、映画のDVDがずらっと並べられている白くて大きな棚が目に入る。

「映画とか好きなんだ?」
「はい、小さい時から大好きで」

 野田の一部を知った。その一部は野田が大好きなものだから多分、野田の心の真ん中辺りにあるものだろう。

「あの、僕、趣味で映画とかのエキストラしてるんです」
「へぇ、趣味なんだ。意外な趣味だな」
「意外……そうですか? うん、そうですよね」

 話しながら適当にDVDを眺めていたら野田は『世界の果てのような恋人たち』という題名のDVDパッケージを見せてきた。

「何これ、楽しいの?」
「これが、僕のデビュー作なんです。僕がデビューしたのは小学六年生の時なんですけどね……」

 野田は意外としゃべる。聞いてないことまでどんどんしゃべるタイプなのか。そして観たいと一言も言ってないのに、映像を流し始めた。