夜、うちの近くの駅付近を不良なやつらと適当にさまよっていると、制服姿の野田を発見した。

「なんか眠てえ。俺、帰るわ」
「もう? 分かった。またな」
「おぉ」

 一緒にいた五人には適当な理由を言ってその場を離れ、そっと野田に近寄る。

「おい、野田」

 びくっと肩を震わせ立ち止まった野田はおそるおそる振り向いた。

「あ、なんだ平井くんでしたか」
「なんだってなんだよ」
「あ、いや」

 スマホで時計を確認すると23時。

「こんな時間まで何やってたんだ?」
「何って? 塾ですけど」
「そうなんだ、終わるの遅いんだな」
「塾終わった後、自習してたから……」
「真面目だな」

 野田は黙った。真面目とか言われるの嫌だったのか?

「あ、そうだ! この前の話……あの撮影の話さ、どうなの?」

 じっと俺を見つめたまま黙った野田。

「平井くんは、僕に興味があるんですか?」
「あ、いや……」

 なんだろう。あらためて「興味あるんですか」とか聞かれると、なんて返事すればいいのか分からない。でも全くないと言えば嘘になるだろう。

「まぁ、ちょっとは……」
「じゃあ、うちに来ます?」

 一瞬野田がにやっとした気がした。

「野田の家、どこ?」
「あそこです」

 野田が指さしたのは、すぐ近くにあるマンションだった。この辺りでは一際目立つ真っ白で大きなマンション。

「遅くて家の人、心配しませんか?」
「いや、多分寝てる。それに最近の俺は朝帰りとか、帰らない日もあるし。心配なんてしてないと思う」
「そうなんですね」

 それ以上はお互いに何も話さず。ふたりは無言のまま、野田の家に向かった。