昼ご飯の時間。いつも廊下側の一番前にある、荒木の席で数人集まって食べている。

 俺と荒木以外が昼ご飯を買いに行った。

 一瞬野田を見る。野田はひとりで弁当を隠すようにして食べている。

「なぁ、荒木。野田が昨日のこと内緒にしてほしいらしい」
「昨日? あぁ、なんか撮影してたことか、おっけー! ていうか、言う言わない以前にどうでもいいや。」

 荒木は他人にあまり興味がない、多分。昨日の件に関しても全く興味がない感じだ。

 そもそも野田が自分で荒木に言えばいいのに。なんで俺は、頼まれたわけでもないのに、やつの代わりにこうして荒木に言っているのだろう。そしてなんで荒木の返事を聞いて、俺は安心したのだろう。

 五時限目の始まりのチャイムがなる前に自分の席に向かった。途中、スマホをいじっている野田の席の前に立つ。

「野田」

 急に呼ばれたことに驚いたのか、野田が肩を震わせ縮こまった。

「な、なんですか」
「なんでそんなにびびってるの?」
「あ、いや……」
「まぁ、いいや。昨日のこと、一緒に見ていた荒木にも言わないでって、伝えといたから」
「あ、ありがとうございます」

 周りの音に潰されそうな程の小さな声で野田はお礼を言った。

「あとさ、昨日のって、何かの役やってたの?」
「昨日のはですね……」

 話の途中でチャイムがなり、先生が入ってきた。

 自分含め、生徒たちは自分の席に戻っていく。結局なんだかんだで続きを聞くタイミングがなく、三日が過ぎた。