教室のシーンだけじゃなく、外や体育館とか色々な場所のシーンも撮った。台詞は事務所や劇団に所属している人たちが多めな感じだったけど、自分もひとこと台詞をもらえた。

　海沿いでの登校シーンで自転車で走りながらヒロインに「おはよう」と言い、彼女の横を通り過ぎる場面。

　台詞は言う機会がないだろうと予想していたけど突然助監督に指名され、やることになり。初めての台詞は不自然にならないようきちんと言えるか不安だった。自分のせいで撮りなおしになっても嫌だなと思った。

　でも野田が言った言葉「いつもみたいにしてたら大丈夫です」を意識して、撮影に挑んだ。

　助監督に「本番スタートしたらいいタイミングの時に手を上げるから、それを確認したら自転車で気持ちゆっくりめで走って」と指示をもらっていた。この場面で自転車に乗って挨拶するのはクラスメイト役の自分だけ。

　助監督の手が上がるのを待ちながら深呼吸した。上がったのを確認すると進み、友達役の人と話しながら歩いているヒロインに挨拶をした。ヒロインが「あ、おはよう」と自然に目を合わせて返してくれた。

　カットがかかり、助監督と一瞬目が合うと微笑みながらうなずいてくれた。これで大丈夫だよという合図なのだろう。

　映像のチェックが入り、オッケーが出ると自分のせいで撮り直しがなかったからほっとした。