「転校生を紹介します。浅見あいかさんです。浅見さん、何かひとことを……」

 先生の台詞から始まった。

「はい。初めまして、浅見あいかです。よろしくお願いします。こうやってみんなの前で話すのもドキドキしていますが……」

 撮影が進んでいく。撮影はワンシーン、一回撮って終わるわけではなく、全体を撮ってからそれぞれのキャストのアップを撮ったりもしていた。その間に準備とかの時間もあって、思ったよりもひとつひとつが長い。

 柳楽斗真がカメラに大きく映るシーンでは後ろの席に座る野田も大きく映るからって、ヘアメイクを担当する男の人に髪の毛を整えてもらったりもしていた。

 次のシーンが始まるのを待っている間、野田を何回もチラ見した。見る度に野田はニヤついていた。

 そんな感じで撮影は続いていき、お昼になった。待機場所として使われている空き教室でクラスメイト役のみんなと昼の弁当を食べる。

 弁当と飲み物をスタッフの人から受け取ると野田の席の隣に座った。

「思ったよりすごいな」
「撮影現場ですか?」
「うん。なんかあんまり映らないからただその場にいればいいのかなって思ってたけど……」
「いや、エキストラも大事な役だから」
「あ、野田今、初めてタメ口になった」
「すいません」

 上目遣いでこっちを見ながら野田は謝った。

「むしろタメ口で話せよ。いや、ただいればいいと思ってたけど、それじゃあダメなんだなぁって言おうとしたんだよ」
「当たり前じゃないですか! エキストラも大事な役のひとつなんです。エキストラがいないと映画はリアルな雰囲気から遠ざかってしまうんです」
「だよなぁ」

 いつもに増して、野田は熱かった。