「撮影期間長いけど、泊まり? 野田って、学校皆勤賞なイメージだけど、休めるの? 俺はよくさぼってるから余裕だけど」

「よく日にちを見てください。夏休みなんです」
「あ、ほんとだ」

 役ごとに参加する日程が細かく書いてあって、全部夏休み期間だった。

「この映画は高校生のお話ですからね。しかもエキストラや端役辺りは各自宿泊場所確保しないといけない場合もあるのですが、これは準備してもらえますね」
「そうなんだ」
「あとですね……」

 普段全く持っていなさそうな野田の熱意。それがかなり伝わってきた。そして野田は好きなことの話になると本当によくしゃべる。

「このサイトのURL送りますのでもしよければ連絡先など教えていただければ……」

 野田に連絡先を教えるとすぐにURLを送ってきた。詳細を自分のスマホで確認する。

 ひととおり画面をスクロールしていくと、保護者の同意書を当日提出してくださいという文章が気にかかった。バスケを辞める前からすでに親とは浅い話しかしてなくて、もしもやると決めても、あらためて親に話すのが面倒くさい。

 希望者は顔写真と住所氏名年齢、服のサイズなどのプロフィールや自己PR、そして希望の役を記入して送信すればいいらしい。そしてその役に決まれば、撮影するシーンがある日の数日前にあっち側から連絡が来るのだとか。

 保護者の同意書、自分で書いちゃえばいっか。

「あと保護者の同意書の紙、一応プリントして渡しときますね! これは自分で書かずに親にきちんと書いてもらってください」

 考えを見透かされたように野田は言った。しかたない、親に話してみるか。

 俺はもうこの段階で参加すると決めていた。親から許可を貰えるのか、ダメだと言われるのか、何も予想出来ない。

 頭の中をもやもやさせながらも、野田が映っている映画を鑑賞した。気分が落ち着かないから予定よりも早めに帰ることにした。