「前に椎名くんと一緒にカフェでお茶をしたときに、
 俺が結菜ちゃんにテスト勉強を一緒にしようと言ったでしょ」


「うん」


 拓生くんと一輝くんと私。
 三人でお茶をした。

 拓生くんは話し始めた。
 そのときのことを。


 拓生くんが言った『噓だったんでしょ』。

 そのことと関係があるのだろうか。


「そのとき椎名くんが言ってたでしょ、
『そのとき結菜ちゃんは自分と用事がある』って」


 まさか。


「でも、それって、
 椎名くんの……
 ……噓……だったんでしょ……?」


 やっぱり。

 気付いていた、拓生くんは。


 あのときの一輝くんの言葉。
 それは噓だった。
 ということを。


「でも結菜ちゃんは優しいから
 椎名くんに話を合わせた方が穏便に済むと思ったんでしょ」


 どうしよう。

 こういう場合。
 どういうふうに返答することが正解なの?





 とはいっても。
 正解もなにも。
 もうバレてしまっている、拓生くんに。

 一輝くんのあの言葉。
 それは噓だった、ということが。


 だから。
 どうにもならない。
 どういうふうに返答しても。



 だからといって。
 良いわけがない、無言のままで。


 何か言わなければ。