「ちょっと待って」


『ごめんね、拓生くん』
 そんな気持ちで歩きかけた。

 そのとき。
 拓生くんが声をかけた。
 私と一輝くんに。


 拓生くんの声が聞こえ。
 私と一輝くんは足を止めた。


「今、結菜ちゃんをお茶に誘ってたところだったんだけど、
 よかったら椎名くんも一緒にどうかな」


 拓生くんの言葉。
 驚いた、ものすごく。


 だから振り返った、勢いよく。
 拓生くんの方に。

 拓生くんは顔色一つ変えず。
 一輝くんの方を見ていた。



 そんな拓生くんのことを見て思う。

 どうして拓生くんは一輝くんのことも誘ったのだろう、お茶に。





 そう思いながら視線を拓生くんから一輝くんに移す。


 一輝くんも顔色一つ変えないで拓生くんの方を見ている。



 そんな一輝くんのことを見て思う。

 どう返答するのだろう、一輝くんは。
 拓生くんの言葉に。


 たぶん。
 断る、一輝くんは。
 そう思う。

 一輝くんの様子。
 見ている限り。
 抱いている、嫌悪感を。
 拓生くんに。
 見えるから、そのように。