「彼と同居をすることは、
 一輝以外は誰も知らないことなの」


「それって、
 おばさんもおじさんも優月(ゆづき)ちゃんも知らないってこと?」


 優月ちゃんは、彩月と一輝くんの妹。


「そうよ。
 だから、お母さんたちには、このことを内緒にしておいてほしいの」


「内緒って……」


「私は高校三年になっても、
 結菜とここで一緒に暮らすということになっているから。
 って、もともとそれが条件でここに暮らせているんだもんね」


 出なかった、言葉が。


「それで今年の四月からは一輝も入れて三人で暮らす、ということに」


「それって本当にうまくいくの?」


 不安でしかない、そんなこと。


「大丈夫よ。
 なんとかなるわよ」


 なんとかなる、って。
 なんてのんきな。


 私の気持ちとは正反対に。
 彩月はとても笑顔になっていた。

 私は。
 とても笑顔になれる状況ではなかった。