「僕、
 前に結菜ちゃんと市条先輩が
 一緒にいるところを見たんですよ」


 ちょっと、輝くん?
 君は一体何を言おうとして……。


「それで結菜ちゃんが帰ってきたときに
 結菜ちゃんに訊いたんですよ、
 友達と会ってたのかって」


 ちょっとっ‼ 一輝くんっ‼

 君は一体何ということをっ‼


 これはっ。
 まずいっ、大変にっ。
 非常事態っ。
 それ並みにっ‼



 早くっ。
 一刻も早くっ。
 止めなくてはっ。
 一輝くんのことをっ。

 そう思っている。
 それなのにっ。
 出てこないっ、声がっ。


「帰ってきたとき?」


 一輝くんの言葉。
 その言葉に不思議そうな表情(かお)をしている拓生くん。



 やっぱり。
 拓生くん、不思議そうにしている~っ。


 それもそう。
『帰ってきたとき』
 そんなことを言ったら。
 誰だって思ってしまう。
『どういうこと?』と。

 それなのにっ。
 一輝くんはっ‼





 って‼

 一輝くんっ‼


 ダメ‼
 一輝くん‼
 これ以上言っては‼


「一輝くん‼ 言っちゃ……」


 やっと出すことができた、声を。

 そして急いで一止めようとした。
 これから言ってしまうかもしれない。
 一輝くんの爆弾発言を。


「あれ、先輩知りません?
 僕と結菜ちゃん、
 今一緒に暮らしてるんですよ」


 ガシャーン‼


 聞こえた、ような気がした。
 そんな音が。

 それだけ衝撃的な一輝くんの発言。