「結菜ちゃん、そんなご丁寧に教えてくれなくてもいいのに。
 前に結菜ちゃんが先輩のこと教えてくれたじゃない。
 確かに名字は知らなかったけど」


 信じていた。
 一輝くんなら。
 きっと合わせてくれる、話を。
 そう思っていた。


 それなのにっ。
 合わせてくれなかった、話を。
 一輝くんはっ。


「そうなの?
 結菜ちゃん、
 いつの間に椎名くんに俺のことを」


 せっかく。
 もっていこう、安全な方に。
 そう思っていた。



 それなのにっ。
 一輝くんがっ。
 話してしまうからっ‼


 一輝くんっ。
 君は一体どういうつもりでっ⁉





 わからない。
 一輝くんが何を考えているのか。
 さっぱりわからないっ‼



 そう思っていると。
 なってきた、パニックに。
 頭の中が。


「拓生くんっ
 それはその……」


 説明をしよう、上手く。
 拓生くんに。


 そう思っても。
 パニック状態。
 そうなってしまっている。

 だからだろうか。
 全く言葉になっていなかった。





 そんな私のことを拓生くんは不思議そうな表情(かお)をして見ている。



 どうしようっ。
 話さなければ、早く。
 拓生くんに。

 そうじゃないと。
 怪しまれてしまう。
 そういう恐れがあるっ。


 それなのにっ。
 そう思えば思うほど。
 上手く出せないっ、声がっ。

 早くっ。
 一刻も早くっ。
 出してっ、声をっ。
 話さなければっ、拓生くんにっ‼


「結菜ちゃんが説明しづらいのなら、
 僕が市条先輩に説明するよ」


 え。