「ずるいよ、結菜ちゃん、
 そんなに泣かれたら……
 僕は何もできなくなってしまう」


 少し困った表情(かお)をしている一輝くん。


「ごめん、結菜ちゃん、
 僕、少し強引過ぎた」


 やっと。
 戻ってきてくれた。
 いつもの一輝くんに。


「ちょっと不安になっちゃって、
 ダメだな、僕」


 だけど。
 一輝くんの表情は少し元気がなく。
 まだ完全に戻ったわけではなさそう。


「一輝くんはダメなんかじゃないよ」


 私が軽率だった。

 一輝くんに気持ちを打ち明けられて。
 一輝くんの気持ち。
 それを知っている。
 それなのに。



 拓生くんとは高校一年生の頃からの友達。

 だからといって。
 二人で会う。
 おまけに家にまで。







 それに。
 一輝くんへの気持ち。
 それが、はっきりとしていない。

 だから一輝くんに答えは出すことができず保留のまま。


 それなのに。
 いけなかった、会っては。
 他の男の子と。

 ましてや家に行くなんて。





 してしまった、失礼なことを。
 一輝くんに。



 ということは。

 それと同時に。
 拓生くんにも失礼なことをしてしまっている。


 拓生くんの気持ち。
 それは知らなかった。

 とはいえ。
 一輝くんのことを保留のまま。
 その状態で拓生くんと二人で会ったなんて。





 いろいろと考えていた。
 そうしたら。
 申し訳ない、一輝くんと拓生くんに。
 そんな気持ちになった。