「結菜ちゃん……
 そんなにも近すぎると、俺……
 ……何かしちゃいそう……」


 近すぎる拓生くんの顔。
 とにかく離れよう、そこから。
 そう思い、離れようとした。
 そのとき。


「俺も一人の男だから……
 結菜ちゃんみたいに可愛い子と二人きりで、
 しかもこんなにも近くだと……
 ……かなりやばい……」


 拓生くんの言葉。

 その言葉に驚き。
 慌てて離れた、拓生くんから。


「あっ、えっと、
 ごめんねっ、拓生くんっ」


 驚き過ぎた。
 それだからだろうか。
 頭の中がパニック状態になり。
 浮かばない、全く。
 良い考えと言葉が。


 そんな中でも。
 謝る。
 その言葉は出た、反射的に。


「結菜ちゃんが悪いわけじゃないから
 謝る必要はないよ。
 ただ……」


 ただ?

 なんだろう。


「あれ以上、
 結菜ちゃんと顔を近づけていたら……
 本当にやばかったかも」


「えっ⁉」


 拓生くんの言葉。

 その言葉に驚き過ぎて。
 これ以上、言葉が出なかった。


「特に
 結菜ちゃんみたいに
 可愛い子は気を付けないと」


 なんか。

 拓生くんの口。
 そこから聞いたことがない言葉。
 出てくる、次から次へと。


「そんなに可愛くないから大丈夫だよ」


 拓生くんの言葉。

 その言葉に動揺してしまう。
 そんな自分がいる。





 いつもの拓生くん。
 とは違い。
 今の拓生くん。
 なんだか別人のように思える。



 それは。
 ある意味。
 耐えられなくなりそうになる。


 それだからか。
 思わず下を向いてしまった。