「違うよ、歩夢くん。
 前に言ったじゃない。
 私と結菜は一緒に暮らしてたって」

「うん、それは知ってるよ」

「それで私が結菜と暮らしていた部屋を出ていくのと入れ違いに
 弟の一輝が結菜と一緒に暮らしてるって」


 それが事実。


「うん、それも知ってる」

「だから二人は恋人同士じゃなくて
 同居をしているっていうだけなの」


 彩月の言う通り。


「そうかもしれないけど……」


 だけど。

 見えた、少なくとも。
 夏川さんには。
 私と一輝くんが。
 恋人同士……に。


 なんだろう、この気持ち。

 思っている、少しだけ。
 嬉しい、と。



 だけど。

 彩月には。
 否定されてしまった、完全に。
 私と一輝くんは恋人同士じゃない、と。


 もちろん彩月には何の悪気もない。


 違う。

 悪気がないもなにも。
 そもそも私と一輝くんは。
 恋人同士ではないのだから。