夏川歩夢さん。


 見た感じ。
 爽やかでイケメン。

 夏川さんがどんな人なのか知らない。
 なので勝手な印象だけど。
 スポーツも万能そうな感じ。


「一輝と結菜は、
 これからどこかに行くの?」


 夏川さんの印象。
 それをあれこれ想像していると。
 彩月が私と一輝くんにそう訊いた。



 一輝くんとカフェに行く。
 そのことを彩月に話した。

 そうしたら。
 彩月と夏川さんもカフェに行くところらしく。
 

 私と彩月は喜んだ。
 その偶然に。


「あっ、そうだ。
 ここで会ったのも、なにかの縁だと思うし。
 これから四人でカフェに行ってお茶しない?」

「彩月、そんなことを言ったら二人に悪いだろ」


 彩月の提案。
 そのことに夏川さんが気を遣っている。


 四人でカフェに行く。
 そのことを夏川さんは思っている。
 私と一輝くんに悪い、と。

 それはなぜか。
 わからなかった。


「なんでよ、歩夢くん。
 別に悪くないでしょ」


 彩月は不思議そうな表情(かお)をして見つめている。
 夏川さんの顔を。


 彩月の表情(かお)。
 その表情(かお)を見ていると。
 よくわかっていない、彩月も。
 夏川さんの言葉の意味。
 そんな感じに見える。



『別に悪くない』
 彩月はそう言った。
 だけど夏川さんはまだ気を遣っている様子に見える。


「だって二人は恋人同士なんだろ」


 夏川さんが気を遣っている。
 わかった、その意味が。


 夏川さんは小声で彩月に話していた。
 だけど。
 確かに聞こえた、はっきりと。

 私の聞き間違いではない。

 夏川さんはこう言った。

『二人は恋人同士』だと。