* * *


 今、私と一輝くんは街中を歩いている。


 特にどこに行くというわけでもない。
 ただのんびりと歩いているだけ。





 歩きながら周りを見渡す。

 街中には、いろいろな人たちがいる。


 家族連れや友達同士。

 それから。
 恋人同士も。



 街中を歩く人たち。
 その人たちのことを見て。
 こんなことを思った。


 私と一輝くんは。
 どう見えているのだろう。
 街中を歩いている人たちに。

 姉と弟?
 友達同士?
 それとも……。



 って。

 一体何を考えているのだろう。



「結菜ちゃん」


 一輝くんに声をかけられ。
 我に返った。


 完全に入り込んでいた。
 自分の世界に。


「なぁに、一輝くん」


 それでも。
 なんとか平静を装う。


「どこかのカフェに入らない?
 結菜ちゃんとカフェでくつろぎたいなと思って」


 穏やかな笑顔でそう言った、一輝くん。


 確かに一輝くんの言う通り。
 カフェでくつろぎたいなと思った。


「私も一輝くんとカフェでくつろぎたい。
 行こ、カフェ」


 一輝くんと同じ思い。
 なので一輝くんにそう返答した。


「やったぁ、結菜ちゃんとカフェに行けるー。
 じゃあ、行こ、結菜ちゃん」


 とても嬉しそうな一輝くんの笑顔。


「うん」


 そんな一輝くんのことを見ている。
 そうすると私も嬉しい気持ちになる。



「一輝‼ 結菜‼」


 嬉しい。
 そんな気持ちになっている。

 そのとき。
 声がした。
 私と一輝くんのことを呼ぶ。