* * *


 準備が済み。

 私と一輝くんは少し遅めの朝ごはんを食べている。



 今日は土曜日。


 なので。
 こういう、ゆったりとした感じ。

 いいな、そういうのも。
 そう思っていた。


「結菜ちゃん、
 これから時間ある?」


 ゆったりとした時間。
 そんな時間に癒されていると。
 一輝くんがそう訊いた。


「うん、あるよ」


 特に予定もない。
 なので、そう返答をした。


「朝ごはん食べ終わったら、
 この辺りを散歩しない?」


 だけど。

 一輝くんが言った言葉。
 その言葉に感じてしまった、戸惑いを。





 そう感じてしまった。
 その理由。



 一輝くんは超美男子。
 それと特進科の中でもトップクラス。

 ということもあり。
 一輝くんは入学してすぐ。
 学校内にいる、ほとんどの生徒。
 その人たちが知る存在に。

 学校内で有名になった一輝くん。
 そんな一輝くんは人気も急上昇。
 特に女子生徒たちから、ものすごく人気。


 そんな一輝くんと一緒に外を歩く。
 そういうところを同じ学校の生徒たちに見られてしまったら。

 そう思うと。
 少しだけ躊躇(ちゅうちょ)してしまう。


 と、思った。
 だけど。
 少しの時間。
 それならいいのかな?

 そんな少しの間。
 そのときに見つかる。
 なんてことはないよね?


「うん、いいよ」


 大丈夫、少しくらいなら。
 そう思った。

 なので、そう返事をした。


「やったぁ、
 結菜ちゃんと一緒に出かけることができるー」


 一輝くん、嬉しそう。


 そんな一輝くんのことを見ている。
 そうすると、私も嬉しくなった。