「結菜ちゃん」


 思い出した、何かを。
 そんな感じで私の名前を呼ぶ一輝くん。


「なぁに、一輝くん」


 どうしたのだろう。
 そう思いながら返事をする。


「お腹空かない?」


 え。

 このタイミング?


 そう思った。

 だけど。
 確かに。
 お腹は空いている、私も。



 ……夢中……になっていた、一輝くんに。

 だから忘れていた、すっかり。


 一輝くんに。
『お腹空かない?』
 そう訊かれて。
 実感した、お腹が空いているのだと。


「うん、そうだね」


 私も空いている、お腹が。
 なので、そう返事をした。



 そういえば。
 今、何時だろう。


 そう思い、時計を見た。
 結構いい時間になっている。


「ちょっと遅めだけど
 朝ごはんにしようか」


 少し遅めの朝ごはん。
 食べようと思った。

 なので一輝くんにそう言った。


「僕は結菜ちゃんが食べたい」


 そうしたら。
 そんなことを言った、一輝くんが。


「一輝くん、それは……」


 一輝くんの言葉。
 その言葉にどう反応すればいいのか。


「なんてね」


 反応に困っている、私。
 そんな私の様子を見つめている一輝くん。


 一輝くんに見つめられ。
 さらに困ってしまう。

 それと同時に、恥ずかしさも。



 そんな私に一輝くんはキスをした。
 頬に、やさしく。


「一輝くんったら」


 困っている、反応に。
 そのときにされたキス。

 それだからか。
 やっぱり少し困ってしまって。


 そんな私とは正反対。
 やっぱり余裕な感じに見える、一輝くん。


「ほんとに可愛いんだから結菜ちゃんは」


 一輝くんはやさしい笑顔で、私の頭をやさしくポンポンしている。


 そのあと一輝くんはベッドから起き上がった。

 続いて私もベッドから起き上がる。