「……ダメだよ」


「結菜ちゃん?」


「こんなこと
 簡単にしちゃダメだよ」


 恋人。
 でもないのに。


「……簡単……
 なわけないじゃない」


「え?」


「僕が」


 一輝くん?


「僕がこんなこと
 誰にでも簡単にすると思ってるの?」


「一輝くん?」


「全然簡単なんかじゃないよ」


 え?


「僕がどれだけの勇気を出して
 結菜ちゃんにこんなことしているか」


「一輝くん?」


「僕の心臓、今ものすごく大変なことになってるの。
 今にも壊れてしまいそうなくらい」


 確かに。


 一輝くんの胸の鼓動。
 もっと激しくなっている。
 そんな感じがする。


 一輝くんの胸の鼓動。
 それを感じていると。
 私の胸の鼓動も激しくなってきた。