「わかった。
 このことは、もう訊かない」


 思っていた、何かあると。


 だけど。
 一輝くんの言葉を聞き。
 安心した。

 もう訊かれない、と。



 それに。
 一輝くんの表情(かお)
 緩やかになっている。


 そんな一輝くんを見て。
 ほっとした。


「でも」


 それなのに。


「その代わり」


 言ったから、そんな言葉を。

 思ってしまう、再び。
 何かあるのでは、と。


「夜、覚悟してね」


 やっぱり‼


 だけどっ。
 まさか、そんなこととはっ‼


「一輝くん⁉」


「なぁに」


「覚悟って⁉」


「そんなの、今言うわけないでしょ。
 夜までのお楽しみ」


 意地悪な笑みを浮かべている、一輝くん。





 そんな一輝くんに。
「教えて」と、お願いしても。

「ヤダ、今は言わない」
 そう言われてしまい。


 それでも。
 した、お願いを。
 もう一度。

 だけど。
「ヤダ、絶対に言わない」
 と、頑固な一輝くん。



 そして。
「帰るよ、結菜ちゃん」と言い。
 ベンチから立ち上がる、一輝くん。


 そんな一輝くんに。
「逃げたっ」と言いながら。
 立ち上がる、ベンチから。


「別に逃げてなんかないよ」
 そう言って。
 さらに意地悪な笑みを浮かべる、一輝くん。