拓生くんが歩き出し。
 私は再びベンチに座り。
 続いて一輝くんも座った。





 私と一輝くんの間。
 ない、ほとんど隙間が。


 伝わる。
 一輝くんの体温。
 一輝くんのぬくもり。

 それは一輝くんそのもののよう。
 温かくてやさしい。



 そう感じながら公園の景色を眺めている。



「結菜ちゃん」


 そのとき。
 一輝くんが声をかけた。


「どうして僕がいた木から離れたベンチに座ったの?」


 えっ。


「ベンチなら僕がいた木の近くにもあったのに」


 一輝くん。
 少しふてくされている。


「どうして、って……」


 一輝くんが近くにいたら。
 話しづらくなってしまう、拓生くんと。


 なんてこと。
 言えるわけがない。


「なんとなく、かな」


 だから。
 そう言うしかなく。


「なんとなく?」


 引っかかったのだろうか。
『なんとなく』という言葉が。

 訊き返されてしまった。


「うん、なんとなく」


 それでも。
 そう言い張った。


「ふ~ん」


 一輝くん?

 なんか。
 意味ありげ?


 これは。
 ある、何か。