そう言いながら。
 示している、拓生くんが。


 気になり、見てみる。
 拓生くんが示している方を。





 驚いた、ものすごく。

 なぜなら。
 移動しているから、一輝くんが。
 私と拓生くんが座っているベンチの近くの木に。


 そして。
 見ている、一輝くんは。
 木の陰から私と拓生くんのことを。



 一輝くん。
 今の君は。
 完全に怪しい人っ‼



「気付いてたよ」


 え。


「椎名くんが木の陰に隠れていることは」


 なんとっ‼

 拓生くんっ。
 気付いていらっしゃった‼


「拓生くん?」


 訊きづらい、ものすごく。


「いつから気付いていたの?」


 だけど。
 いられない、訊かずには。


「最初から」


「えっ」


「待ち合わせ場所の時計台のところに行ったときから」


「えぇっ⁉」


 そのときからっ⁉


「結菜ちゃん、
 両腕で×印を作ってたでしょ」


「うん」


「そのときに結菜ちゃんが見ていた方向を目で追ったんだ」


 そうか。


「その先には椎名くんがいた」


 私の行動。
 気付かれていた。
 拓生くんに。