思っている、いろいろと。
 その間に着いた、ベンチの前に。


 ベンチの場所(ここ)は。
 一輝くんが隠れている木。
 そこから少し離れたところ。

 この場所なら。
 気付かないと思う。
 拓生くんは。
 一輝くんのことを。







 そう思いながら。
 座る、ベンチに。



 その瞬間。
 また稼働し始める。
 緊張が。


 無理もない。
 今から拓生くんに話すこと。
 それだけ重要……重い話。





 だけど。
 なろう、できるだけ冷静に。


 そう思い。
 整理した、頭の中で。
 拓生くんに話すことを。


「結菜ちゃん?
 どうしたの?」


 今の私の様子。
 どんなふうに見えているのだろう。
 拓生くんには。

 深刻そう。
 それとも。
 悩み事でもある。
 見えている? そんなふうに。


 どちらにしても。
 見えないだろう、穏やかな感じには。


「拓生くん、心配してくれてありがとう」


 まずは言った、拓生くんに。
『ありがとう』を。


「それから……」


 続かない、次の言葉が。


「結菜ちゃん?」


『どうしたの?』
 そういう表情をしている、拓生くん。





 決めた、覚悟を。

 そのはずだった。

 それなのに。
 出てこない、言葉が。



 だけど。

 無言でいるわけにもいかない。


「……ごめんね……」


 だから。
 出した、声を。
 振り絞るように。


「結菜ちゃん?
 どうして『ごめんね』なの?
 結菜ちゃんが謝ることなんて何もないよ」


 優しい。
 本当に優しい、拓生くん。


 拓生くんの優しさ。
 いつも本当に感謝している。



 だけど。 
 その優しさ。

 辛すぎる。
 今の私には。


「拓生くんはそう言ってくれるけど、
 私には……あるの」