気になった、どうしても。
 視線が。

 だから。
 見た、そちらの方を。







 私がいる時計台。
 そこから、ある程度、離れたところ。

 そこには並んでいる。
 ある程度の間隔で木が。



 その中の一つの木。

 その木に。
 隠れている、一輝くんが。


 見ている、一輝くんは。
 私の方を。
 木の陰から顔だけチラッと出して。





 一輝くんがいる。
 気付いた、そのことに。



 訊きたい、本当は。
 今すぐ一輝くんのところに行って。
『どうしてここにいるの』と。


 だけど。
 できない、そんなことは。

 来てしまうかもしれない、そのときに拓生くんが。

 そう思うと。
 できない、一輝くんのところに行くことは。





 だから。

 送った、メッセージを。
 一輝くんのスマートフォンに。

 どうしてここにいるの、と。



 本当は。
 早い、通話の方が。

 だけど。
 来るかもしれない。
 通話中に拓生くんが。


 だから。
 思った、無難だと。
 メッセージのやりとりをした方が。





 返信がきた、すぐに。
 一輝くんから。

 内容は。
 やっぱり心配だから、だそう。


 それから。
 こんな言葉も。
 通話にしない? と。





 焦った、一輝くんのメッセージを見て。


 とんでもない、通話なんて。

 そう思いながら。
 作った、×印を。
 両腕をクロスさせて。



「結菜ちゃん?」


 そのとき。
 聞こえた、声が。