「ありがとう、彩月~」
宮下さんが立ち去った。
その後。
言った、小声で。
彩月にお礼を。
「いいよ、そんなこと」
さらっと言ってくれた、彩月。
「それにしても、
そういう話って広まるの早いね~」
彩月は小声で言いながら弁当のおかずをパクっと食べた。
「だって月曜日の夜に誰かが見たんでしょ、
結菜と一輝が一緒に公園にいるところを」
「そうみたいだね」
「実際のところ、
どれくらいの範囲まで広がっているのかは
わからないけど、
月曜日の夜のことが
木曜日の昼にはもう伝わってるんだから、
ほんとすごいスピードだよ」
引き続き彩月は小声でそう言いながら弁当のおかずをパクパクと口に運ぶ。
彩月の言った通り。
早い、ものすごく。
広まるスピードが。
そういう話は。
そのことで怖いと思うことが。
それは。
広まっていく、どんどん話が。
自分の知らないうちに知らないところで。
今回は宮下さんが私に声をかけた。
だから。
できた、知ることが。
広まっている、結構な範囲にまで。
私と一輝くんのことが。
だけど。
誰も言わなかったら。
私にそのことを。
そうしたら。
できなかった、知ることが。
この事実を。
って。
ちょっと待って‼
ということはっ。
入ってしまっている⁉
拓生くんの耳にも⁉
そうだとすればっ。
知られてしまうっ。
拓生くんに話す前にっ。
どうしようっ。
そんなことになってしまったらっ。
してしまっていることに、ものすごく。
拓生くんに誠意がないことをっ。
どうかっ。
入っていませんようにっ。
拓生くんの耳にっ。