「たぶんなんだけど、
如月さんと椎名くんのこと、
結構な範囲に広まってると思うよ」
結構な範囲に、って⁉
止まらない、パニックが。
宮下さんの話に。
って。
ちょっと待って‼
今週の月曜日の夜。
私と一輝くんが一緒に公園にいた。
それを見たという人がいる。
ということは‼
見られていたっ⁉
キス……していたところもっ⁉
って。
待って。
わからない、まだ。
限らない、見られてしまったとは。
キスをしていたところまで。
「で、どうなの、如月さん。
椎名くんと付き合ってるの?」
くる、グイグイと。
宮下さんの質問攻め。
宮下さんっ、お願い。
訊かないでっ、これ以上っ。
それから。
彩月っ、助けてっ。
もう一度っ。
そう願う、心の中で。
彩月の目をじっと見ながら。
「まぁまぁ、宮下さん。
その話は、またの機会にってことで。
あっ、そうそう、
ちなみに椎名一輝は私の弟よ」
「えっ、椎名さんの弟⁉
確かに名字が同じ……
って、そうじゃなくて、
私が訊いてるのは如月さんと椎名くんのことで……」
「はいはい、わかったから、
今日のところはここまでで」
遮ってくれた、彩月が。
宮下さんの質問攻めを。
そうして。
立ち去った、宮下さんは。
仕方なさそうに。