「一輝くん……
 それも、ちょっと……」


 言いづらい、一輝くんに。

 だけど。
 出した、なんとか言葉に。


「えぇぇ~、
 それもダメなのぉ~」


 こねている、少しだけ駄々を。
 一輝くんは。



 だけど、思う。
 そんな一輝くんのことを見ていて。

 そんなこと。
 決まっているでしょっ、ダメにっ。


 こっそりと離れたところから見るなんて。
 とんでもないっ。


「一輝くん、安心して。
 報告する以外は
 拓生くんと二人でいることはないから」


 安心してもらいたい、一輝くんに。
 そう思っている。


「いくら結菜ちゃんがそのつもりでも、
 市条先輩は結菜ちゃんのことが好きなんだよ。
 そのまま結菜ちゃんのことを帰すわけがないよ」


 だけど。
 伝わらない、なかなか。


 一輝くんの心配。
 それは消えていないようで。


「ねぇ、結菜ちゃん、
 だから、せめて少し離れたところから
 結菜ちゃんのことを見守るというのは、ありにしてよ」


 一輝くんの声のトーンや仕草。
 見える、すがりついているように。





 どうしよう。


 見ている、今の一輝くんのことを。

 そうすると。
 できない、これ以上。
 何も言うことが。



 だけど。