「だって、
 そのとき僕も市条先輩に会うんだから」


 超えた、驚きを。

 そのためだろう。
 出ない、声が。







 とはいっても。
 違う、かもしれない。
 驚きとは。



 していた、なんとなく。
 予感は。

 だから。
 あると思った、何かが。


 ただ。
 わからなかった。
 その予感が何なのかまでは。





 今、わかった。
 一輝くんから聞いて。


「一輝くんっ?」


 出た、なんとか声が。


「なぁに、結菜ちゃん」


「一輝くんも一緒に行ったら、
 拓生くん、びっくりしてしまうんじゃないかな」


 どう説得しようか、一輝くんに。

 そう思いながら。
 話す、必死に。


 できるだけ。
 包んで、オブラートに。


「別に」


「え?」


「いいんじゃない?」


「えっ?」


「それならそれで」


「えぇっ⁉」


『それならそれで』って⁉

 一輝くんっ。
 君は何ということを言っているの⁉


「市条先輩がびっくりするのは、
 それは市条先輩の都合だから」


「都合って……」


 一輝く~んっ。

 それはいくらなんでも、だよっ。


「だって、すごく心配だから。
 結菜ちゃん一人で市条先輩のところに行かせるの」


 心配って……。

 拓生くんに報告するだけなのに。


「大丈夫だよ、一輝くん。
 報告しに行くだけだから」


 さすがにマズいと思う。
 一輝くんと二人で拓生くんに会うことは。


「それだけ?」


『大丈夫』
 そう言っても。
 まだ心配している様子の一輝くん。


 そんな一輝くんのことを見ていて思う。
 なぜ、そんなにも心配なのだろう、と。

 報告以外、何もないのに。



 だけど。

 思った、今。