「そうなんだ」


 驚いた。
 一輝くんの返答に。





 だけど。
 思った、すぐに。
 驚くことではない、と。


 直接想いを打ち明けてくれた人。

 その人に通話やメッセージを送るだけで済ませる。

 それは失礼なこと。



 わかっている、ちゃんと。
 一輝くんも。
 そのことを。


「じゃあ、
 教えてね、決まったら」


 わかっている、一輝くんも。

 そのことに少しだけほっとしている。


 そのとき。
 言った、一輝くんが。
『教えてね』と。

 一体何をだろう。


「市条先輩に報告するために会う日」


 あぁ。

 そのこと、ね。

 
「うん」


 伝える、一輝くんに。

 それは特に不思議なことではないのかもしれない。


 ただ。
 予感がする、何か。

 それは気のせいだろうか。


「絶対だからね」


 念を押す、一輝くん。


 これは。
 やっぱり何かある?

 いられない、そう思わずには。


「市条先輩に報告するのって放課後でしょ」


「うん」


「市条先輩に報告する当日、
 授業が終わったら僕に連絡して」


 当日の放課後。
 一輝くんに連絡?


 拓生くんに報告したら、すぐ帰るのに。


「それはいいけど?」


 やっぱり。
 思う、不思議に。
 一輝くんの言葉。


「そのとき教えて。
 市条先輩とどこで会うか」


 ん?

 拓生くんと会うのは私一人。
 それなのに。
 なぜ場所を知りたいのだろう。


「教えることは構わないけど、
 一輝くんにとっては特に必要な情報じゃないんじゃない?」


「そんなことないよ。
 ものすごく重要な情報だよ」


「……?」