「……なんてね」


 え?


「一輝くん?」


 どうして?


 一輝くんは二つ目のボタンを外したところで手を止めた。


「……どうして……
 私は……一輝くんとなら……」


「ダメだよ、結菜ちゃん」


 え?


「そんなこと簡単に言っちゃ」


「違う、簡単なんかじゃない」


 思っている、真剣に。

 一輝くんとなら、って。


「大切にしたいんだ」


「え?」


「そういうことは……
 結菜ちゃんのことを大切にしたいから
 ……急がない……」


「一輝くん」


「さっ、今日は寝よ。
 僕は結菜ちゃんと、こうしているだけで幸せだから」


 一輝くんはそう言って。
 私のことをぎゅっと抱きしめた。


「一輝くん」


「なぁに、結菜ちゃん」


「ありがとう」


 すごく嬉しい。
 一輝くんの言葉が。


 それから。
 とても幸せ。
 そんな言葉を言ってもらえたこと。


「僕、結菜ちゃんから『ありがとう』を言われるようなことしてないよ」


 いつも優しい一輝くん。


「そんなことない。
 本当に本当にありがとうだよ」


「よくわからないけど、
 結菜ちゃんにそう言ってもらえて嬉しいよ」


 本当に本当に嬉しくて幸せで。

 本当に本当にありがとうで。


 それから。

 本当に本当に大好きだよ、一輝くん。



 そう思いながら。
 一輝くんと一緒に眠りについた。