「『そういうことではないけど』なに?」


 まだ捨てられた子犬のような目で。
 私のことを見てくる一輝くん。


「えっと……」


 ダメ‼

 見ちゃダメ‼


 捨てられた子犬のような一輝くんの目を‼

 そうじゃないとっ‼


「結菜ちゃん?」


 見ないように、できるだけ。
 一輝くんの目を。

 そうしたら少しは冷静になれそう?



 それにしても。
 どうして、わかってくれないのだろう。
 一輝くんは。

 一輝くんと一緒にお風呂に入る。
 そんなこと。
 できるわけがない。


 だって。


「……恥ずかしい……から……」


「え?」


「一輝くんと一緒にお風呂に入るなんて、
 恥ずかしい、すごく」


 決まっているでしょ‼
 そんなこと‼



 見ないようにしている、さっきから。
 一輝くんの目は。


 だけど。
 恥ずかしくなっている、ものすごく。

 そのため。
 できなくなっている、さらに。
 一輝くんの顔をまともに見ることが。


「結菜ちゃん」


 見ていない、一輝くんの顔を。

 だけど。
 感じる、ものすごく。
 一輝くんの視線を。


 一輝くんっ。
 見ないでっ、そんなにも。

 恥ずかしいっ、ものすごく。


「可愛い、結菜ちゃん」


 たまらない、恥ずかしくて。



 そんな中。
 抱きしめられた、やさしく。
 一輝くんに。

 それだから。
 増してきた、ドキドキが。


 恥ずかしさ。
 ドキドキ。
 これらが身体中を駆け回り。
 急激に上がっている、体温が。

 今の状態なら。
 焼ける気がする。
 自分の身体で目玉焼きが。


「わかった」


「え?」


「先にお風呂に入ってくるね。
 その代わり」


「その代わり?」