「……そうだね」


 一輝くんは動きを止め。
 やさしく私から離れた。


 一輝くんは身体を起こし。
 私のことも起こしてくれた。



 わかってくれた?

 わかってくれたんだよね、一輝くん。


「じゃあ」


 え?


『じゃあ』って。

 何かあるの? 一輝くん。


「じゃあ?」


 あるのだろうか、何か。

 訊き返す、そう思いながら。


 そうすると。
 ニコッとした、一輝くんは。



 する、予感が。


 この笑顔。

 あるっ‼ 何かっ‼


「やっぱり一緒にお風呂に入ろ」


 やっぱり‼

 何かあると思ったらっ‼


「一輝くんっ、
 それはっ」


 思った、何かあるとは。

 わかっていても。
『一緒にお風呂に入ろ』
 その言葉を聞いてしまう。
 そうすると。
 慌ててしまう、やっぱり。


「僕と一緒に入るの嫌?」


 正直なところ。
 精一杯、今は。
 自分のことで。


 どうすれば。
 なれるだろう、冷静に。

 考えている、そんなことを。







 それなのに。

 一輝くん。
 どうして見ているの。
 そんな目で。


 私を見る一輝くんの目。
 それは、まるで捨てられた子犬のようで。





 そんな目で見つめられたら。
 わからなくなってしまう、どうすればいいのか。



 解決していない、まだ。
 自分のことも。


 それなのに。


「嫌とか、そういうことではないけど……」


 ずるい。

 ずるいよ、一輝くん。



 そんな目で私のことを見るなんて。


 それは。

 絶対に大反則っ‼